墨付けから手きざみの手法について


手きざみで作る住宅が、最近はほとんどなくなってきています。プレカットと比べて長時間に手間がかかる作業になるからです。

コンピューター化されたプレカットでは、構造図が瞬時に出来上がります。そして、墨付けから加工までも機械が流れ作業であっという間に出来上がります。

手きざみでは、計画する間取り図を基に大工の棟梁が板図(番付図)を作成して、手造りの定規と差し金と墨壺で、一本一本の部材の木の性質などを見て使用箇所を決めて、墨付け作業を行います。
その手間日数は、1週間から2週間もかかる時があります。
そんな手間やコストがかかる手きざみは、だんだん無くなっている傾向にあります、そして若い大工さん達は、どんな作業なのかもわからない大工さんがいます。

そこで、墨付けから手きざみまでの流れをここで紹介させていただきます。

墨付け作業について

一昔前までは、建築に携わる物のほとんどが手作業でした。家造りも大工さんによってほどんど手作業によって行われていました。

打合せで決まった間取り図を基に、大工の親方はベニヤ板に柱の位置や梁の位置が判る番付図を作成します。

この番付図は、ベニヤ板に書き込みます。基準単位は3尺を1マスにしてそこに柱の位置や梁の位置を書き込んでいきます。

使う道具は、墨壺と墨サシと差し金です。大工さんは、墨壺と差し金を上手に使いこなせないと一人前の大工とは言えないと、当時は言われてました。

差し金は、墨付け作業には欠かせない道具ですが、プレカットが浸透している現在では、半分以上の大工さんが差し金を待たないで仕事をしています。

最初に行う作業が、定規といわれる3センチ×4.5センチほどの木材に、1尺毎に基準を記してた定規を作成します。

そして、その定規に矩計(かなばかり)といいまして、土台高さ~胴差高さ(1階梁)~軒高~棟高などの各部分の高さを記します。

この定規の矩計が、建物の高さを決定させる大切なものになります。
親方は、毎回新しい定規や番付図を作成して、建て終わった後もちゃんと下小屋に取っておきます。リフォームや修理が発生した際は、それらがとても役に立ちます。

そして、親方は部材選びを行います。材木屋さんまで足を運び、土台に使う部材を例えばヒバ材の3.5寸などのように、材質から寸法まで親方が指定します。

特に柱を選ぶ時は、大工の親方の目力が試されます。材木屋さんに置いてある木材は、のこぎりで刻まれたままの状態で置かれています。

カンナ掛けした時にどの様な表情(木目)の柱になるかは、親方の経験からの目力が大切になります。

そうして、1本1本を親方が選んだ部材を、材木屋さんは親方が指定する順番にて、大工さんの下小屋に運びます。

下小屋とは、大工さんが木材を下ごしらえ(加工)する場所である事から下小屋と呼ばれています。

自分で下小屋を持っている大工の親方もいれば、当時の材木屋さんは加工する場所を無料で貸し出し、その場所を借りて下小屋としていた親方もいました。

今は、プレカットが浸透した結果、下小屋そのものがなくなり、あっても部材を収納する倉庫的な役割になってしまっています。

材木屋さんから運ばれた木材に、墨付け作業を行います。先ずは、基礎の上に乗る土台に柱がほぞ接合される個所に標を書き込みます。

その際、接合される柱の番号を土台に書き込んでいきます。柱の番号はイの1番から始まり、縦軸がイロハニホヘト、横軸が12345とで表示されます。

次に柱の墨付けを行います。節の無いきれいな木目の柱を和室用に選び、親方が粗カンナをかけて木目を確認してほぞ墨と番付けを書き込みます。

そして、柱の頭に乗る梁の墨付け、2階の柱~軒梁~小屋組み材としたから上の部材へと墨付け作業を行います。

手きざみ作業について

親方が書いたほぞや継手の墨に沿って、のこぎりやノミを使って木材を加工していきます。
きざみ加工も、土台から下の部材から加工していきます。柱が接合するほぞ穴部分はほぞ穴用の加工機で穴を空けて、ノミできれいに仕上げていきます。

土台と土台をつなぐには継手と言われる技法で継ぎます。一般的な継手技法は腰掛アリ継ぎと言われる継手が使われます。

その加工は、のこぎりで刻んでのみできれいに仕上げます。
そして、柱の上に接合される梁を土台のように柱用のほぞ穴や継手を加工します。2回の柱、軒梁~小屋組み材へとほぞ穴加工機やノミやノコギリをつかって親方が記した墨に沿って刻んでいきます。

手きざみは、このようにすべて手作業で行いますので加工に対する人工が掛かりその分のコスト高から今は加工マシンによるプレカットが多くなっています。

しかし、手きざみでは部材の特性を活かして使用する箇所を決めたり、ほぞや継手、仕口などは、今のように金物をあてにしない仕上がりを意識して作成します。

以上が大まかな墨付けから手きざみの流れです。下の部材から仕上がった部材をトラックに積んでいきます。そうしますと、建て方当日、おろした部材の一番上が土台になるようになります。これも知恵ですね。

墨付けから手きざみは大工の伝統的なもの

墨付けから手きざみは、神社仏閣建築が日本で行われるようにようになってからの伝統を引き継いできたものです。

コンピューター化からプレカットへと大きく変革しましたが、この伝統的な技法は受け継いでいかねばなりません。

コスト重視によって、プレカットが主流になってはいますが、国内木材の1本1本の特性を活かした日本家屋を造りたいと言うニーズには、親方の目を大切にした手きざみによる工法の方が合っています。

お客様のニーズに合わせて、伝統的技法を見直していただく事も必要と考えます。

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